取引先が破綻した場合

取引先が破綻してしまった場合、債権の回収は非常に困難になります。

特に、不動産担保を有していない企業にとっては、その後の破産手続等において配当金を
受領できるだけで、債権のうちの大半は回収不能として諦めるしかないケースも多いかと
思います。

しかしながら、「諦めるのは早い」ケースもあります。

(1)相殺により、回収する

取引先が破産しても債権回収が図れるケースの代表例として「相殺」が挙げられます。相殺とは、当事者間で対立する債権を相互に保有し合っているような場合、両債権を同じ金額分だけ共に消滅させることができるという制度です。

取引先が破綻してしまった場合でも、取引先に対して債権と債務の両方が存する場合には、両者を相殺することにより、取引先に対する債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。


相殺するための要件には、以下の3つがあります。

 ①両債権が同種の債権であること
 ②両債権が弁済期にあること
 ③相殺が禁止されていないこと(特約により、相殺禁止とされた場合のほか、法律上、相殺が禁止されている場合があります)
もっとも、相殺の意思表示を、誰に対して、どのように行うべきか、頭を悩まされるところと思います。当事務所に相談いただければ、破産手続等の法的整理手続に応じて意思表示の相手方を選択し、内容証明郵便を利用する等、より確実な方法で、相殺の意思表示を行うことができます。

(2)担保権を実行する

破産手続開始決定があっても、債権者の担保権は制限されることなく行使することができるのが原則です。債権者の担保権は別除権と呼ばれます。 所有権留保で商品を取引先に売買し、取引先が倒産した場合、売買契約を解除し、取引先の了解をとった上で商品を引き上げます。
取引先の了解をとらないと、窃盗罪などに問われるおそれがあるため、書面で了解をとります。了解をとる場合、代表者か取引先の弁護士とすべきです。取引先がその商品を既に第三者に転売している場合、その第三者が商品の所有権を即時取得していることが考えられること、及び、取引先との売買契約の中で第三者に転売されたときは所有権留保が解除されると定められている場合がありますので、その場合は所有権留保の方法によることは難しくなります。
抵当権の場合、裁判所に対し、競売の申立てを行います。申立を行う裁判所は、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。

(3)債権譲渡

取引先は、それまで何らかの事業を行ってきた以上、第三者に対して金銭債権を持っていることも十分に考えられます。例えば、取引先が別の会社に対して売掛金を持っている場合です。その場合、取引先からその債権の譲渡を受け、あなたが譲り受けた債権を第三者に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。
債権譲渡は原則として自由にできますが、債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三債務者に対して譲渡の事実を通知させる必要があります。内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう。

(4)自社製品・他社製品を回収する

自社製品を回収する方法については、上の所有権留保の実行方法で記載したとおりです。売買契約を解除し、所有権に基づいて回収しますが、取引先の承諾が必要になります。また、他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます。

もっとも、この場合はもともと第三者の財産だったものですから、「自社の製品を回収する」場合よりもさらに取引先の同意書を取っておく必要が高くなります。この場合も同意書がない場合は窃盗罪に問われる恐れがあります。弁護士としては、この方法は問題が多くお勧めすることはできません。

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