外国人の労働問題

外国人を雇用する場合,雇用についての様々な労働問題が予想されます。
 外国人雇用をめぐってのトラブルを防止するために,外国人を雇用する会社がどのようなことに注意したらよいかを考えてみます。

Q1  外国人の,会社への入社にあたって説明することで,大事なことは何で
すか。

A1  まず,外国人労働者を,会社に必要な人材として大切に扱うことが大事で
すが,それだけでは駄目です。
   まず,賃金の面ですが,初任給が25万円と聞けば,その額が給料日にそ
のまま支払ってもらえるものと誤解してしまいます。
   賃金の中から,健康保険,厚生年金保険,所得税,住民税等の社会保険料,
税金が控除されることを必ず説明する必要があります。
   又,外国人労働者の中には,厚生年金には加入したくないと考えている方
も存在しますが,日本の法律では,すべての労働者が加入する義務があるこ
とも説明しなくてはなりません。

Q2  外国人に対し,内定通知書を出したり,雇用契約書を作成する必要があり
ますか。

A2  あります。外国人を採用した時は,入社予定日,従事する仕事の内容,雇
用期間,賃金などの労働条件を記載した内定通知書を渡すことが重要です。
   日本語のみではなく,その外国人の母国語で記載した書面を交付するこ
とが重要です。
   外国人を採用する場合,入出国在留管理庁の就労可能な在留資格の許可
が必要ですが,内定通知書のコピーを提出し,仕事の内容が入管法の規定に
合致しているかを審査してもらうことになります。
 その後,雇用契約書を作成しますが,後に言った言わないでトラブルが発
生しないよう,労働条件については詳細に記載し,日本語ばかりでなく,母
国語でも作成し,外国人に疑問が生じないよう,意を尽くして説明する必要
があります。

Q3  外国人を採用する際,労働条件の明示について,特に注意すべきことがあ
りますか。

A3  労働基準法15条は,使用者が労働者を採用する時は,賃金,労働時間,
その他労働条件を書面などで明示しなければならないとされています。
   従いまして,外国人に対しても,労働基準法15条に基づいた労働条件の
明示が必要です。
   そして,労働基準法3条では,国籍を理由として,賃金,労働時間,その
他の労働条件について,差別的な取扱いをしてはならないと規定していま
す。
   そして,最近の入管法改正によっては,外国人労働者の労働条件を,日本
人労働者と同等かそれ以上にしなければならないとされており,差別禁止
の考え方をさらに発展させています。
 又,労働条件の明示は,外国人が理解できる内容で,文書で,正確にしな
ければなりません。
   明示された労働条件と,実際の労働条件が異なっている場合には,外国人
労働者の側から一方的に雇用契約を解約することが,労働基準法15条2,
3項で保障されています。
   外国人労働者が契約解除の日から14日以内に母国へ帰国する場合には,
使用者が旅費も負担しなければなりませんので一層の注意が必要です。

Q4  採用した外国人労働者に対して,会社の就業規則をどのように周知させ
たらよいですか。

A4  就業規則は,労働基準法106条1項,同法施行規則52条の2によって
次のようになっています。

1 常時各作業所の見やすい場所へ掲示し,又は備え付けること
2 書面を労働者に交付すること
3 磁気テープ,磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し,かつ,各作業
所に労働者がその内容を常時確認できる機器を設置すること。

   このように,就業規則の周知は,日本人労働者と外国人労働者とに違いは
ありませんが,日本語を理解することができなければ,外国人労働者はそれ
に書かれた内容を理解し,守ることができませんので,使用者は,母国語に
翻訳した就業規則を用意する必要があります。
   なお,最高裁判所は,「就業規則が法的規範としての性質を有するものと
して,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業所の労働者に
周知させる手段が採られていることを要するもの」(平成15年10月10
日最高裁第2小法廷判決)と判示していますし,労働契約法7条も,「労働
者及び使用者が労働契約を締結する場合において,使用者が合理的な労働
条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には労働契
約の内容は,その就業規則で定める労働条件によるものとする。」と規定し
ています。
   従いまして,就業規則の周知を使用者が怠りますと,使用者に不利益とな
りますので,外国人労働者に対しては,母国語で,就業規則の内容を十分に
説明する必要があります。

Q5  労働時間について,外国人労働者と日本人労働者で違いはありますか。

A5  特にありません。労働基準法32条は,休憩時間を除いて1日に8時間,
1週に40時間を法定の時間とし,これを超えて労働させてはならないと しています。
   使用者は,外国人労働者に対して,原則としてこの法定時間内で労働させ
なくてはなりません。
   但し,留学生をアルバイトとして雇用する場合には,1週28時間までの
労働時間しか認められず,学校が夏休み等の場合には,1日8時間まで働か
せることができますが,それ以上は入管法違反になりますので注意が必要
です。

Q6  外国人労働者が仕事中に手をプレス機に挟まれ怪我をしました。どのよ
うにしたらよいですか。

A6  まず,会社は,労働基準監督署に労働災害の発生事実を報告しなければな
りません。
   これをせず労災隠しをすると犯罪になりますので注意してください。
   その上で,労働基準監督署は,療養補償給付や休業補償給付の請求をしま
す。
   もし,外国人労働者に後遺障害がある場合,障害補償給付の請求をするこ
とになります。
   しかし,この労災保険の給付によって,外国人労働者のすべての損害が填
補されるわけではありませんので,会社は,外国人労働者に,慰謝料や労災
保険で賄いきれなかったその他の損害の補償をしなければなりません。
   外国人労働者を雇用している会社は,日本人労働者に対してと同じよう
に安全配慮義務を負っており,これに違反して外国人労働者に被害を発生
させた場合,債務不履行となり,損害賠償責任を負うことになります。
   会社に不注意がなければ損害賠償責任はありませんが,これはごく例外
であると思います。

Q7  外国人労働者に対して残業をさせることができますか。

A7  日本人労働者と外国人労働者とを問わず,従業員に対して時間外労働義
務を負わせるには,会社の労働協約や就業規則に,時間外を根拠づける規定
があり,その内容が合理的であり,労働基準法36条に基づいて労使間で時
間外労働,休日労働についての協定が結ばれ,それが労働基準監督署に届出
をされることが条件となります。
   使用者が,上記の条件を充足させたうえで,外国人労働者に残業を命じる
ことは合法です。
   但し,外国人労働者に残業を拒否する合理的理由が存在する場合は,残業
を義務付けることはできません。
   外国では,残業がない国が多いですので,外国人労働者には,採用時,残
業があることを伝え,それに対し,時間外手当が出ることを説明しておく必
要があります。
   それでも残業をしたくないと考えている外国人労働者に対しては,その
理由をしっかりと聞く必要があります。
   残業が多い会社は,外国人労働者とのミスマッチがないよう,このことに
留意することが大事です。

Q8  外国人労働者が退職する時にはどうしたらよいですか。

A8  外国人労働者が退職する時の手続は,日本人労働者とほぼ同じです。
   健康保険の被保険者証の回収,雇用保険の離職票の交付,源泉徴収票の交
付等をします。
   外国人が退職後に転職する時は,在留資格の変更,就労資格証明書の交付
を申請しなければならず,その時,退職証明書を添付しなければなりません
ので,その交付も必要です。
   そして,会社は,ハローワークへ雇用保険被保険者資格喪失届を提出する
必要があります。
この場合,出入国在留管理庁への届け出はしなくてもよいです。
   外国人労働者が3か月以上次の職場も決めず,何もしていないと,在留資
格の取消しの対象となりますので,そのことも正しく教示しなければなり
ません。
   以上,外国人労働問題について,代表的なことを,Q&Aの方式で述べま
したが,外国人労働者を雇用する場合には,いろいろな困難な事例が発生し
ます。
   その時はお気軽に当事務所国際部にご相談下さい。

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