留学生の日本における就職支援についての大学関係者・企業へのお知らせ 2019年9月30日

2019年4月から,改正入管法により,在留資格「特定技能」が創設されましたが,さらに,本年5月30日から,日本の大学や大学院に在籍する留学生にとっては朗報となる,在留資格「特定活動(告示46号)」が創設されました。
 今までも,留学生が日本で就職しようとする場合,在留資格「留学生」から,在留資格「技術・人文知識・国際業務」に変更すれば可能でしたが,留学生のすべての方にその在留資格が認められるわけではありませんでした。
 このたび,日本の大学又は大学院を卒業,修了した留学生の就職支援を目的として,入管法7条1項2号による別表第1の5の表の一部が改正され,留学生が日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを希望する場合は,在留資格「特定活動(告示46号)」による入国,在留が認められることになりました。
 出入国在留管理庁が策定したガイドラインの概要は次のようなものです。
 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格はハードルが高く,単なる大学卒業程度の教養を有していることのみでは日本で就職することは困難でした。
 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては,一般的なサービス業務や製造業務に従事させることはできませんでしたが,「特定活動46号」の在留資格では,それができるようになりました。
 政府は,わが国の大学や大学院で学んだ留学生にその能力を発揮してもらうため,ひいては,最終的に日本に永久に在住してもらい,わが国の文化や経済力の向上に貢献してもらうために,この在留資格を創設し,サービス業務や製造業務に就くことも認めたものです。
 「特定活動(46号)」の対象者は,日本の4年制大学の卒業者及び大学院の修了者に限られ,日本語能力については,日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上が資格取得の要件となっています。
 なお,大学又は大学院において,「日本語」を専攻して大学を卒業し,大学院を修了した方については,日本語能力はあるものとして扱われます。
 「特定活動(46号)」は,「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」に就くことが条件になっていますので,使用者や上司からの作業指示を理解し,単純に作業を行うだけの受動的な業務では足りず,「翻訳・通訳」の要素のある業務や,自ら第三者に働きかける際に必要となる日本語能力が求められています。
 ガイドラインによりますと,他者との双方向のコミュニケーションを要する業務だとされています。
 又,「日本の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用能力等を活用するものと認められること」も条件となっています。
 この解釈には難しいものがありますが,あまり厳格に考えることは適当ではなく,留学生が取得した知識を生かせる職場であるとゆるやかに考えるべきであると思います。
 ガイドラインには,この制度の活用術とし,次の6例が挙げられています。

ア  飲食店に採用され,店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業
務を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)
※厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。
イ  工場のラインにおいて,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生
や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,自らもラインに入っ
て業務を行うもの
※ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。
ウ  小売店において,仕入れや商品企画等と併せ,通訳を兼ねた外国人客に対
する接客販売業務を行うもの(それに併せて,日本人に対する接客販売業務
を行うことを含む。)。
エ  ホテルや旅館において,翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの
開設,更新作業を行うものや,外国人客への通訳(案内),他の外国人従業
員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それ
に併せて,日本人に対する接客を行うことを含む。)。
※客室の清掃にのみ従事することは認められません。
オ  タクシー会社に採用され,観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ,
自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの
(それに併せて,通常のタクシードライバーとして乗務することを含む。)。
※車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。
カ  介護施設において,外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら,外
国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り,介護業務に従事するも
の。
※施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

 このように,学術的な高度の知識がなくても,大学卒業者や大学院修了者の有する一般的な能力で足りるものであり,日本の大学を卒業できるだけの留学生であれば,大企業ばかりでなく,中小企業でも就労は可能です。
 そして,このような留学生を採用する企業は,日本人が従事する場合に受ける賃金と同額以上を留学生に支払わなければなりませんし,さらに正社員として雇用しなければなりません。
 当然,企業内の大学卒業者,大学院修了者の賃金と同一水準にしなければならず,能力があればそれ以上支払わなければなりません。
 転職も自由ですが,その場合,指定された企業が変わりますので,資格変更許可申請をしなければなりません。
 この在留資格「特定活動(46号)」を取得するには,素行が良好であること,入管法違反がないことが条件になっていますので,留学生が資格外活動許可の条件に違反して1週につき28時間以上を超えてアルバイトをした場合も触れるとガイドラインに書いてありますから,注意が必要です。
 「特定活動(46号)」の在留資格が認められた者の扶養を受ける配偶者又は子供につきましては,在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者の配偶者等)によって日本に在留できることになっています。
 概要は以上のとおりですので,大学の就職関係者は,留学生に告知していただければ幸いです。
 又,当事務所国際部に要請があれば,当事務所の弁護士をセミナー講師として派遣します。
 人材不足に悩まれている企業経営者にとっても朗報ですので,詳しくは当事務所国際部にご相談いただければ幸いです。

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